世界トップクラスの教育・研究レベルを誇るシドニー大学の「bachelor of arts」に所属する黒岩芽生さん。社会学と人事のダブルメジャー、さらに多様性研究を副専攻として、「人がいかに自分らしく生きるか」という方法を模索しています。シドニー大学のフレキシブルな専攻制度やオーストラリア生活で感じる多様性などについて話してもらいました。

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簡単に自己紹介を

シドニー大学1年の黒岩芽生です。2024年7月に入学し、今で4ヶ月ほど経ちました(取材時は11月)。学部は「bachelor of arts」で、日本語にすると人文社会学部が一番近いと思います。社会学と人事をダブルメジャーで学び、多様性研究を副専攻にしています。

とにかく本を読むのが好きで、特にエッセイがすごく好きです。最近シドニーの街中にある日本の本をたくさん扱っているお店に行き、吉本ばななさんの本を何冊か買いました。そんなふうに隙間時間を過ごしています。

海外大学へ進学しようと考えたきっかけ

高校2年生になって初めて海外大学への留学を考えるようになりました。それまでは、日本のICUや国際教養大学などを目指していました。海外大学への憧れも少しはありましたが、英語での授業についていける自信がなかったというのもあります。

転機は、高校2年の5月ごろにシドニーに1カ月ほど留学することになり、そこでシドニー大学で心理学を専攻する中国人留学生と出会ったことでした。その方は学んでいる心理学についてすごく熱意を持っていて、30分ぐらいずっと話し続けられるような様子でした。そんな姿を見て、「素敵だな」「こういう学びの方法もあるんだな」と心揺さぶられたのです。シドニー大学への入学方法などについても伺い、少しずつイメージが湧いてきました。その方のように、自分が本当に熱意を持って学べることがある場所で、貪欲に学びたいと思いました。

シドニー大学を選んだ理由

海外大学進学を考えるようになったきっかけをくれたのが、シドニー大学生だったということに加え、シドニー大学に学びたい学問の学部・専攻があったというのが最終的な決め手です。高校2年生の頃から「多様性研究」というものを学びたいと思っていました。多くの人は生き方について単一の理想のようなものが出来上がっているように感じ、生き方、キャリア形成、アイデンティティのような部分に興味が出てきたのです。多様性研究はほかの大学では社会学の一部として扱われているのですが、シドニー大学は副専攻としてあります。より深く学ぶことができるのではないかと考えています。

留学前の英語レベル

学習環境

出身は群馬県で、かなり田舎の方に住んでいました。その町の中には高校もなく、特に英語教育に力を入れているという場所ではなかったです。ただ、私の家族は「英語は大事」という考えで、小学校低学年から塾で英語を学ばせてくれました。中学校は神奈川県の中高一貫校に進みました。この学校は「異質な他者を認め、国際的な教育にも力を入れる」という指導方針で、小学生当時「ユニセフに入って世界の子どもたちを助けたい」という夢を持っていた私に合っていると思ったのです。この学校はいわゆるIB校のようなものではないのですが、英会話の授業が週1回程度あったり、留学に関する詳しい情報を提供してくれたりする環境でした。中学部を卒業し、そのまま高等部へ進学したのですが、この進学の少し前から体調を崩してしまいました。そのためまずは回復させることを優先させ、その学校から自宅で学べる通信制高校へと移りました。

この後、高校2年の7月から本格的に留学に向けた勉強を始めたのですが、スピーキングが本当にできなくて大変でした。

具体的な勉強方法

勉強方法としては、通信制高校のサポート校(塾のようなもの)で週3時間、海外大学出身の先生にエッセーを添削してもらったり、スピーキングの練習をしてもらったりしました。あとは自分でYouTubeの英語学習動画を見たり、IELTS公式問題集を何度も解いたり、単語帳を肌身離さず持って確認したりしました。YouTubeでは、IELTSのスコアをいかに上げるかというスキルを多く学びました。

マインドセットの部分で言うと、「毎日コツコツやる」というのを大切にしていました。例えば、 IELTS についてはリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの問題を毎日 1 回ずつは絶対に解き、その日のうちに復習も終わらせるようにしました。自分の英語への抵抗感をどんどんなくしていきました。

シドニー大学への入学方法

アメリカの大学進学のための標準テスト「SAT」スコアと、英語力の証明としてIELTSを提出し、合格しました。SATは数学と文学的な問題(リーディング、ライディング)の2つに分かれています。シドニー大学のbachelor of artsに直接入学するためには、「IELTS6.5以上」、SATスコア「1170〜1260点」が最低要件として設定されていることが多いです。私のスコアは「IELTS7.0」「SAT 1410 点」でした。

シドニー大学での学業について

専攻の具体的な内容

社会学と人事をダブルメジャーで学び、多様性研究を副専攻にしています。

今学ぶ社会学は基礎的な勉強で、2週間に1度くらいトピックが変わり、いろいろな分野を網羅的に勉強しています。例えば、政策、ジェンダー、人種、オーストラリアの多文化主義について学びました。

人事は、日本の大学にはないメジャーだと思います。まずは政府、企業、労働組合の関係性や雇用にまつわるセクターを理解し、そのあとに「従業員のパフォーマンスを上げるにはどうするか」や「採用プロセスで差別をなくすためにどうするか」など働きやすい環境づくりについて学びを深めています。

多様性研究については、社会学と同じように2 週間単位ぐらいでトピックが変わり、ジェンダーや教育やメディアにおける多様性の促進などを勉強しました。

授業形式

オーストラリアの大学の授業はレクチャー(講義)とチュートリアル(討論)という2部構成で行われます。興味深いと思ったのは、課題がすべてリーディングというわけではなく、例えばドキュメンタリーを見て、それについてチュートリアル(討論)するような授業も結構ありました。

多様性研究の授業の受講者は特にさまざまなバックグラウンド(移民など)を持つ方が多く、そんないろんな背景をもとにディスカッションをして、多様性について考えるという空間はすごく良かったと感じています。

ダブルメジャー、副専攻

私の周りではダブルメジャーの人が多い印象です。私のようにフレキシブルに2つのメジャーを組み合わせることができるのもシドニー大学の魅力です。知人は、音楽系の専攻とプログラミング系の専攻を組み合わせていて、将来的にはデジタル音楽に関わりたいと言っています。

私が社会学と人事をダブルメジャーとする理由としては、「自分らしく生きる」ということにすごく重きを置いているからです。そういう価値観を持ったときに、それを実現する2つのアプローチを考え、一つは人生の初めの段階から自分や自分の将来ついて考えていくという方法と、もう一つは社会に出た後にいかに自分を見つめるかという方法と。この後者について、会社・組織の人事担当として、社会学や多様性研究の知識を生かし、それぞれが自分らしく生きるという意味を実現していけたらいいと思っています。

キャンパスについて

まず一つ好きなのは、キャンパスの横にも公園があるのですが、とにかく緑が多くて落ち着きます。「勉強、勉強」となるといっぱいいっぱいになるので、そんな時は一回外に出るようにしています。

あとは勉強できる場所がかなりたくさんあり、図書館以外にも屋外に机とベンチが置いてあります。学生みんなが自分のスタイルに合わせ、勉強できているようです。

生活について

学生限定のシェアハウスに暮らしています。今は6人でシェアし、シドニー大学や近くにある別の大学の学生がいます。出身はオーストラリア、アジア、ヨーロッパとさまざまです。

自分の部屋があり、お風呂やキッチンなどは共有というタイプです。学生寮がいっぱいで入れなかったので、値段の安さとあとは大学紹介のシェアハウスだったという安心感で入居を決めました。

とても快適に過ごすことができています。入居者同士、あまり近すぎない距離で、でも会えば少し雑談するようなちょうどいい距離感です。

食事は自炊メインで、たまに友人と外食します。外食すると高いのですが、自炊だと食材を選べば結構抑えられるかと思います。

友だち作り

交友関係を広げていこうと頑張っています。友達作りに関してはそこまで難しくないという印象があります。なぜかというと、最初2週間ほどのオリエンテーション中に留学生だけを対象にしたイベントや、在学生とチャットできるイベント、あと「メンターシッププログラム」などもあるため、つながりを作るのは思ったよりも難しくなかったです。

また、大学の中に「ソサエティ」と呼ばれるサークルがたくさんあり、そこに参加するのが友達作りには最適だと聞きました。ただ、今学期は勉強についていくことに精一杯で…。来期はそういった場にも参加し、もう少し人脈を広げていきたいなと思っています。

オーストラリアの魅力

「寛容さ」みたいな空気感があるのがすごくいいなと思っています。例えば、いろんな文化に対応できるように食材が用意されたり、施設が作られていたりすることが多いです。また、私が受けた授業の教授は、留学生が抱える英語の不安や悩みについて聞いて、アドバイスをくれることもあります。

オーストラリアに来て、カルチャーショックを感じたか考えてみたのですが、何も思い浮かびません。これはつまりインフラや清潔さ、安全面といった生活面で大きなギャップがないということだと思います。これもオーストラリアの一つの特徴かなと思います。

オーストラリアの多様性

普段から多様性をすごく感じます。大学でもさまざまな言語、宗教の方に出会います。日常生活でもスーパーにはさまざまな国の食品が売っていて、醤油やみそ、みりんなども普通に手に入ります。

授業に関連して思うことは、チュートリアルのときに学生それぞれが自分のバックグラウンドを元に自分の意見を発信しているという場面をよく見ます。「自分はこういうバックグラウンドがあって、こういうバックグラウンドをもとに、こういう意見を持っています」というような発言の仕方をする人が多い印象ですね。そして、それがあるからこそ、その授業の中でいろんな視点で物事を考えることにつながっていると感じています。

今後について

今学んでいる多様性研究と社会学を人事の分野に応用したいと考えています。具体的には、会社でのカルチャーづくりやDE&Iに関するプログラム策定を通して、人々が自分らしく、心地よくいられる空間づくりに取り組んでいきたいです。

留学を望む後輩に向けてのメッセージ

「コンフォートゾーン」から抜け出す機会が本当に多いと実感しています。例えば課題で、エッセイやリーディングなど今まで自分が対応してこなかったもの、向き合ってこなかったものに何度も直面しました。しかしそれを乗り越えることによって、留学したばかりの4カ月前よりもできることは多くなっています。

また、SATやTOEFLなどのスコアは、すぐに結果が見えてこないでしょう。私もそうでした。けれど、それでもコツコツ少しずつ地道にやっていけば、必ず自分の目指しているものへたどり着けます!そのコツコツ努力している部分は、今すぐには結果が出なくても、後で必ず何らかの形で結果になります。自信を失わずに頑張ってほしいと思います。

この他にも、U-LABO生やアメリカ大学卒業生の体験談を多数ご紹介しておりますので、以下よりぜひご覧ください!

U-LABO体験談 – U-LABO | 世界トップ大学への進学 (ulabo.org)
学生・卒業生インタビュー – U-LABO | 世界トップ大学への進学 (ulabo.org)

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記事監修・・・小泉 涼輔
記事監修・・・小泉 涼輔

U-LABO代表。高校の時の偏差値28から、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を飛び級で卒業。日本で最もアメリカ名門大学への編入に精通した専門家の1人として、これまでに多くの学生を合格に導いている。2022年にはUCLAが選ぶグローバルに影響を与える企業・起業家100(「UCLA Bruin Business 100」)に選出された。著書「UCLAに留学したいと思ったら読む本
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