今回はスタンフォード大学の博士課程で生物学を学んでいるK.K.さんにお話を伺いました。

U-LABOチューターとして、学生のサポートも行っているK.K.さん。これまでの軌跡と共に、学部と大学院の違いなど学部生の知らない院生の生活について教えて頂きました!

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海外生活スタート時の英語力は?

カナダに来たのは13歳の頃なんですが、最初は英語があまり話せませんでした。

日本で英検準2級までは取ってたんですけど、英検の英語って実生活で使う英語とはかなり違うので、なかなか苦労しましたね。

それでも高校卒業時の最終成績では、IB(国際バカロレア)プログラムで45点満点中42点を取ることが出来ました。このIBプログラムの授業は非常に難しかったので、英語力アップはもちろん、内容的に大学の授業でもとても役に立ったと思います。

高校ではどんな課外活動をしていましたか?

高校からフェンシングを始めたんですが、競技にも出て楽しんでました。

それからボランティア。僕は生物が好きなので、生物の科学博物館みたいな場所で説明役を担当したり、公園で自然について説明する説明係をしたり。学校でも生物系の自然クラブを設立して運営していました。

ほとんどの人は、高校時代に専攻や将来について決められないと思います。でももし好きな事や趣味、「こういうことやりたいな」 っていう考えがあれば、そこに時間を使うことで将来やりたいことが見えてくるはずです。

生物が好きだと思ったのはいつですか?

日本の小学校で、将来の夢とかについて書くとかよくあるじゃないですか。 それを思い出してみると、小学生の時は数学とか科学とかの理系はあんまり好きじゃなくて。外交官になりたいとか、そういうことを書いてたイメージ。

理系が好きになったのは中学校くらい。カナダに来る少し前あたりのタイミングなのかな。なぜかは、ちょっと覚えてないんですけど。

でも、今やっている微生物の研究をやりたいと思ったきっかけが、漢方医をやっている僕のおじいさん。僕が高校生の時に、漢方薬、つまり生物から取った物質で、細菌を殺菌できるかという研究を、付近の大学の教授とやり取りして研究をさせていただいたんです。そこから結構これ面白いなと思って。教授からするとメリットゼロなんですけど、優しい教授だったので自分からコンタクトして研究させていただきました。

学部時代に出願した大学と選んだ理由は?

カナダとアメリカの大学へ出願しました。カナダだとブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)とかトロント大学(University of Toronto)。アメリカだったらジョンズホプキンス大学 (Johns Hopkins University)とかカリフォルニア大学(University of Caifornia)。僕は医学と生物学が好きだったので、その分野に強い大学に出願しました。

どの大学にも合格しましたが、ジョンズホプキンスにした理由は*Early Decisionで出願したからです。

*合格したら必ず入学するという条件付きでの出願方式。出願締め切りも合格発表も早い。Regular Decisionで出願するよりも合格率が高いと言われている。

なぜ、カナダの大学ではなく、アメリカの大学に行こうと思ったのですか。

家族や友人との繋がりがあるから、母国の大学を受けて、進学して、地元にとどまろうという人もたくさんいると思うんです。だけど僕にとってカナダは母国ではない。親も長期的に住んでるわけでもないですし。カナダでも、アメリカでも、僕が留学生ということに変わりはないんです。だから研究がより進んでいる大学に行こうかなと思って、アメリカのジョンズホプキンスにしました。

PhDのために出願した大学と選んだ理由は?

10校に出願しました。西海岸で言うとスタンフォード (Stanford University)、カリフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校 (UCSF)。東海岸だとハーバード (Harvard University)、マサチューセッツ工科大学 (MIT)、イェール大学 (Yale University)、シカゴ大学 (University of Chicago)、それから生物学で有名なニューヨークのロックフェラー大学 (Rockefeller University) とかですね。

UCSF、MIT、シカゴ大学、ロックフェラー大学などにも受かりましたが、スタンフォードを選びました。研究実績や教授の質で比較して「こっちの大学がいい」とは判断できません。そこで僕にとって重要になってくるのが院生間の文化。スタンフォードは、研究に没頭するだけではなくて、生活の他のエリアのバランスも取れているイメージが強かったんです。

PhD出願におけるGPAの重要性は?

僕のGPAは3.98でしたが、よく言われるのは、GPAが3.5を超えていれば特に問題視されないってこと。重要な順番は、実績、推薦状、出願エッセイ、その後にGPA。

実は僕、実績っていう実績があんまりなくて、論文もまだあまり発表されてないんです。そこで重要になってくるのが、出願エッセイ。自分の具体的な研究内容についての知識ももちろん重要なんですけど、その領域全てに関する知識とか、ビジョンとか。そういうものをアピールするのも、かなり重要だと思います。それと、教授の推薦状。

実際、実績がなくても推薦状やエッセイで補うことが出来るんです。特に最近はCOVID-19の影響で研究が遅れがちになっている人も多いので、応募時に論文がなくても理解を示してくれる大学は多いです。

出願エッセイの内容は?

エッセイの構造としては、なぜこの領域に興味を持ったのか、この領域にどんな将来性があるのか、どんなビジョンを持っているのか、などをアピールした上で、自分の具体的な研究内容を語り始める。

それで最後のコンクルージョンとして、なぜこの大学に行きたいのか、どういう教授がこの大学にいてなぜこの教授の研究が好きなのか、そういうことを書くのが一般的。学部への出願エッセイのテーマは自己分析が多いですけど、大学院だとこの大学で何をしたいのかを具体化させて、プランしていくみたいな。

大学院の出願エッセイにも、Personal Statement (志望動機書)というエッセイがあって、研究内容じゃなくて、自分が科学者としてどのようなビジョンがあるのかなども書かないといけない大学もありました。

僕は学部時代に、コミュニティラボっていう研究室を設立したんです。科学って、研究者以外だと参加するのにハードルが高いじゃないですか。科学の研究について学ぶことはできるんですけど、実際に参加するチャンスはなかなかない。なので、科学にバックグラウンドを持たないコミュニティの方々に、大学に来てもらって短期的な研究に参加してもらう。そういう施設があればいいなと思って、大学の施設を借りて研究室を設立しました。

科学ってどんな研究がされているのか、実際に参加してる人じゃないとイメージがつかない場合が多い。実際に学ぶだけでなくて、実際に自分でやることによって、理解がより深まるのではないか、という内容のエッセイを書きました。

学部生と院生の違いは?

学部生は学費を払って学ぶんですが、院生はお給料を貰って研究するんです。お金を貯められるぐらいの給料ではないんですけど、学費を払わずに学べる感じ。

勉強か研究かで言うと、学ぶ感覚も全然違いますね。勉強っていうのは、既に人類が知っている知識を学んで、テストでいい成績を出すだけ。スリルとか楽しさはあまりないなって思います。でも研究は誰も知らない知識を求められている。僕は勉強は好きでも嫌いでもなかったんですけど、研究は好きですね。

ただ、大学院でもほとんどのMaster Course (修士課程)は研究じゃなくて授業がメイン。つまり勉強が続くので、Master はやりたくないっていう人が多いのも分かりますね。

それから、院生、特にDoctoral Course (博士課程)の学生になると、自由な時間が増える。学部生は、授業後や週末も、宿題やテスト勉強で忙しいと思いますが、院生だとそれがない。

僕は普段、朝8時くらいに起きて、夜は6時くらいに家に戻ってきます。その間は、研究したり、教授とのミーティングをしたり。実際の実験をやっていない時は、実験の設計をしたりとか。帰宅後に宿題とかテストとかの勉強をする必要がないので、結構楽ですね。トレーニングしたりしてます。

学部時代と1番違うのは、主体性と責任。学部時代は忙しいんですけど、全ては教授から与えられたもので、敷かれたレールの上を進むだけ。でも大学院での研究になってくると、どのような実験をするのか自分で考えないといけない。それに責任が重くなるので、自分で考えた研究のプランが良くなかったら、自分の研究成績に影響が及びます。

研究の結果はどのくらいで出るの?

研究に充てる時間の割合は、設計3割、実験7割。場合によっては結果が出るまでに時間がかかるものもあります。

僕が大学院に進学して研究を始めてから3ヶ月が経って、時間を費やしてきた実験の結果が最近出てきました。でもこれがどういう結果なのか分析するまで分かりにくいんです。いい結果なのか、悪い結果なのか。ただ、自分が思っていたのとはなんか違う結果で。こんなに時間を費やしてるのに、これが最終的にはどんな結果になるのか、もっと時間を費やさないと分かんないっていう。今はまだ発見と言えるか分からない状況ということですね。研究には我慢する力が必要だと思います。

研究を進めるうえで心がけているのが、長い研究と短い研究を並行してやること。そうするとずっとフラットな状態ではなくていられます。長い研究をやりながら、短いスパンでフィードバックが見られるような研究も並行するとやりやすいです。

成果が出ないとどうなる?

大きな成果が出ないままっていう院生がほとんどだと思います。でもそれで辞める人はさすがに少ないですね。

でも「結果」には、インパクトが大きい結果と、小さい結果があって。インパクトがあまり大きくない結果だとしても、論文を変えて発表して卒業することはよくあります。

ほとんどの人は、 インパクトが小さい発見をいくつもするのが一般的です。インパクトが小さかったとしても「これは論文にしなくていいや」っていうわけにもいかないので。

そういう小さな発見をたくさんして、それが実績として認められて教授になれるのかというと、それは別の話。教授になるならインパクトが大きい論文が1つは必要になります。

論文ってどうやって発表するの?

教授のインプットがないと論文は出せないんです。論文を提出するのは、自分じゃなくて、研究室単位で提出するから。「この教授がこの論文を提出します。ちなみにこの研究を実際にやったのが、学生の誰々さんです。」という感じなので、自分で論文を出すことはできません。もし教授が「恥ずかしい結果なので出したくない」って言ったら何もできません。

大学院卒業後のプランは?

もし採用されるのであれば、教授になるのが1番ですね。

でも一般的なのは、大学院を6年で修了した後、2〜3年間ポストドクター(博士研究員)として研究して、その後に大学教授の仕事を見つけるという道。ポストドクターをやっても、なかなか仕事が見つからない方もたくさんいます。厳しいですね、アカデミックな環境にとどまろうとするのであれば。

教授の仕事に就けたとしても、准教授になって7年くらい研究して、そこから正教授になれるかなれないか。もしなれなかったら他の大学へ行かないといけないのでプレッシャーはありますね。

どこの大学で働きたいかっていう考えはあまりないです。そもそもどんな大学が、教授として働くにはいい大学なのかも分からないので。お金がある大学なのか、自由にやらせてくれる大学なのか。

お話とても良い刺激になりました!ありがとうございました!

ご自身の研究の傍ら、U-LABOのチューターとして学生をサポートしてくださっているK.K.さん。U-LABOスタッフ一同、感謝の気持ちとともに、K.K.さんの成功を楽しみにしています!

この他にも、U-LABO生やアメリカ大学卒業生の体験談を多数ご紹介しておりますので、以下よりぜひご覧ください!

U-LABO体験談 – U-LABO | 世界トップ大学への進学 (ulabo.org)
学生・卒業生インタビュー – U-LABO | 世界トップ大学への進学 (ulabo.org)

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記事監修・・・小泉 涼輔
記事監修・・・小泉 涼輔

U-LABO代表。高校の時の偏差値28から、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を飛び級で卒業。日本で最もアメリカ名門大学への編入に精通した専門家の1人として、これまでに多くの学生を合格に導いている。2022年にはUCLAが選ぶグローバルに影響を与える企業・起業家100(「UCLA Bruin Business 100」)に選出された。著書「UCLAに留学したいと思ったら読む本
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