小学生の「なりたい職業ランキング」で常に上位に挙がる憧れの職業、獣医師。 日本では、大学の獣医学課程で6年間みっちりと学び、国家試験に合格することが獣医師として働くための必須条件です。
それでは、世界一の経済大国であり大自然に多様な動物が生息するアメリカで、獣医師(Veterinarian)になるにはどのようなルートをたどる必要があるのでしょうか。
実は、人間の医師(MD)や歯医者(DDS)とは異なり、動物の命を扱う獣医師の分野は、アメリカでも外国人留学生に対して門戸が広く開かれているプログラム(資格)の一つです。しかし、その教育システムや難易度は日本の常識とは全く異なります。
2026年現在、アメリカの獣医師の社会的地位と報酬はさらに高騰しており、グローバルな舞台で動物の命を救いたい学生にとって非常に夢のある選択肢となっています。
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今回は、アメリカで獣医師になるための一般的なルート、大学院(ベテリナリースクール)進学に必要なシビアな条件、全米トップ10の大学ランキング、そして日本の2〜3倍とも言われる「驚きの年収・キャリア事情」までを完全網羅して解説します!
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1. アメリカで獣医師になるための一般的なルート
アメリカで正規の獣医師として臨床に就くためには、4年制大学(学部課程)を卒業後、「ベテリナリースクール」と呼ばれる4年制の専門職大学院を修了し、DVM(Doctor of Veterinary Medicine)の学位を取得する必要があります。高校卒業から数えると、資格取得までに最低8年の期間を要するのが一般的です。
【学部課程(4年間)】
・プレベテリナリー(プレレク)科目の履修
・GPAの維持 / 臨床・動物実務経験の積立
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【ベテリナリースクール(DVM課程・4年間)】
・第1〜3年:基礎・臨床講義&科学実習
・第4年:臨床ローテーション(実地研修)
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【北米獣医師免許試験(NAVLE)合格 + 州法試験(Jurisprudence Exam)】
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【各州での獣医師ライセンス取得・就労】
なぜ大学院への進学が必須なのか?(制度的メカニズム)
アメリカの4年制大学(学部課程)は一般教養および幅広い基礎科学の修得を目的として設計されており、学部単体で高度な専門資格を与える構造になっていません。
また、全米共通の国家試験である北米獣医師免許試験(NAVLE: North American Veterinary Licensing Examination)の受験資格、および各州の獣医事法(Veterinary Practice Act)に基づく免許交付基準において、AVMA COE(米国獣医師会教育評議会)が認可したDVM教育課程の修了が法律上の必須ルールとして厳格に定められているためです。
国家試験(NAVLE)と州別ライセンス要件
ベテリナリースクールを修了(または修了見込み)した後は、ICVA(国際獣医評価評議会)が管轄するNAVLEを受験します。NAVLEは全360問の臨床シナリオ問題で構成される7.5時間のコンピューター試験で、合格基準はスケールドスコア425点以上に固定されています。
【重要:NAVLEの受験回数制限ポリシー】
2026年3月の試験ウィンドウより、NAVLEの受験制限に関する重大な制度改定が適用されています。すべての受験者には「生涯最大5回まで」の受験機会しか付与されず、事情を問わず例外(ウェイバー)は認められません。そのため、一回一回の受験に向けた緻密な戦略とリスク管理が求められます。
NAVLEに合格した後は、実際に勤務・開業する州独自の「州法倫理試験(Jurisprudence Exam)」などをクリアし、各州のライセンスボードから免許の交付を受けることで、初めて臨床業務を行うことが可能になります。
2. ベテリナリースクール(大学院)進学に必要な準備
ベテリナリースクールへの進学は全米でも屈指の難関であり、合格率は平均10〜15%程度にとどまるため、学部時代からの戦略的な準備が不可欠です。選考は学業成績(GPA)だけでなく、多面的なバックグラウンドを評価するホリスティック(総合的)審査が採用されています。
専攻(メジャー)を選ぶ
学部時代の専攻に関して「特定の学科でなければならない」という制限はありません。しかし、大学院の出願要件として高度な理工系科目の単位修得が指定されているため、志願者の大半は以下の専攻を選択するのが効率的かつ合理的とされています。
- 生物学(Biology)
- 動物科学(Animal Science)
- 生化学(Biochemistry)
- プレ・ベテリナリー(Pre-Veterinary)トラック
大学院出願に必要な主な要件を満たす
以下は、カリフォルニア大学デイビス校(UC Davis)やバージニア・メリーランド大学、フロリダ大学などの一般的な要求基準をベースにした主な進学要件です。
- 指定前提科目(Prerequisites)の修了一般生物学、無機化学、有機化学、生化学、物理学、遺伝学、微生物学、統計学、英語作文、人文・社会科学など。原則として「C」または「C-」以上の成績で修了している必要があります。
- 競争力のあるGPA(評定平均)の維持募集要項上の最低基準は2.5〜3.0以上と設定されている場合でも、実際の合格者平均GPAは3.5〜3.7以上と非常に高水準です。
- 臨床・動物関連の実務経験(150〜500時間以上)有資格獣医師の指導監督下で行った小動物・大動物病院、動物園、研究施設等での実務経験ログの提出が義務付けられます。単なるペットの飼育経験は実績としてカウントされません。
- 電子推薦書(eLOR)の提出VMCAS(共通出願サービス)を通じて最低3通を提出します。うち少なくとも1通は、直接実務で関わったライセンス保有獣医師による作成が必須です。
- 状況判断テスト(SJT)のスコア提出近年のトレンドとして、対人能力や倫理的葛藤への対応力を測るCasper(キャスパー)試験やAAMC PREviewなどのオンライン適性テストを導入する大学院が増加しています。
- 英語能力の証明(留学生)留学生の場合は、TOEFL iBT(105点以上等)などの高い語学スコアが求められます。
3. 全米の獣医学名門大学(ベテリナリースクール)一覧
アメリカで獣医師になるには、AVMA COEによって認可されているベテリナリースクールを卒業する必要があります。認可校は全米でも33校に限られており、極めて狭き門となっています。
以下は、U.S. Newsなどの評価をベースにした米国内の主要な獣医学高等教育機関トップ10です。
| 順位 | 州 | 大学名 | 特徴・強み |
| 1 | カリフォルニア | カリフォルニア大学デイビス校(UC Davis) | 全米最高峰の設備と広大な附属動物病院を誇る名門 |
| 2 | ニューヨーク | コーネル大学(Cornell University) | 伝統あるアイビーリーグ校で高度な臨床・研究を展開 |
| 3 | コロラド | コロラド州立大学(Colorado State University) | 先端医療・がん研究・外科領域で全米屈指の実績 |
| 4 | ノースカロライナ | ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University) | 豊富な症例数と先進的な臨床ローテーションを提供 |
| 5 | オハイオ | オハイオ州立大学(Ohio State University) | 総合的な獣医療チームと大規模な教育施設を保持 |
| 6 | テキサス | テキサスA&M大学(Texas A&M University) | 大動物・産業動物から伴侶動物まで強い伝統を持つ |
| 7 | ペンシルベニア | ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania) | 都市型高度二次救急や先端バイオメディカルに強み |
| 8 | ウィスコンシン | ウィスコンシン大学マディソン校(UW-Madison) | 感染症や生命科学研究との強力な連携プログラム |
| 9 | フロリダ | フロリダ大学(University of Florida) | エキゾチック・野生動物医学・救急集中治療に定評 |
| 10 | ジョージア | ジョージア大学(University of Georgia) | 地域獣医療の拠点であり、公衆衛生教育にも注力 |
参考元:U.S. News
なぜ郊外型キャンパスが多いのか?(施設的メカニズム)
一般的なビジネススクールやデータサイエンス分野とは異なり、獣医学部では大規模な附属動物病院に加え、牛や馬などの大動物・産業動物に対応する農場設備、広大な研究・隔離スペースが不可欠です。そのため、広い敷地を確保できる郊外のキャンパスが高水準な教育環境を実現しています。
国外のAVMA認可校という選択肢
AVMA COEによる認可を受けた大学は、アメリカ国内だけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、英国、韓国、およびカリブ海地域(西インド諸島:Ross University、St. George’s Universityなど)にも存在します。これらの海外認可校を卒業した場合でも、アメリカ国内の卒業生と同等に直接NAVLEを受験してアメリカでライセンスを取得する道が開かれています。
4. アメリカの獣医師の最新年収・キャリア事情
2026年現在、アメリカにおける獣医療需要の拡大に伴い、獣医師の市場価値と報酬は大きな上昇傾向を見せています。
年収データ
アメリカの獣医師の給料水準は以下の通りです。
- 給与中央値(Median):$125,510 / 年(約1,800万〜1,900万円)
- 平均給与(Mean):$140,270 / 年(上位の開業医や専門医が平均を引き上げ)
- 新卒平均給与:約$130,000 / 年
- 上位10%の層:$212,890以上 / 年
参照元:米国における獣医師の平均給与(2026年):州別、職種別、経験年数別の内訳
カリフォルニア州(平均$158,610)やマサチューセッツ州(平均$162,030)など、都市部や生活費インデックスが高い地域ではさらに高額な報酬が提示される傾向があります。
専門医(Board-Certified Specialist)の高度キャリア
DVMを取得した獣医師のうち約28%は、さらなる高度医療技術を修得するため、大学病院等での1年間のインターンシップを経て、3〜4年間のレジデンシー(専門研修)に進みます。
アメリカ獣医専門ボード(ABVS)が認可する専門医資格(外科、眼科、皮膚科、腫瘍内科、救急集中治療など)を取得した「認定専門医」は、一般医(GP)と比較して約72%高い年収レンジ($237,000〜$345,000以上)を獲得することが可能です。
ジェンダーバランスと業界動向
アメリカの獣医療界は、医療分野の中でも女性の進出が最も著しい業界の一つです。現在、実務に就く獣医師の65%以上、そして獣医大学院の新入生の約80%を女性が占めており、男女間の給与格差が少ないクリーンな職場環境が形成されています。
5. 【補足】日本の獣医師がアメリカで働くための選択肢(ECFVG vs PAVE)
すでに日本などのAVMA未認可の獣医大学を卒業し、日本の獣医師免許を持っている場合、アメリカの大学院に入り直すことなく「臨床同等性評価プログラム」を修了することで、アメリカのライセンス試験(NAVLE)の受験資格を得ることができます。
主要なルートには以下の2つが存在します。
【日本の獣医大学卒業(AVMA未認可校)】
│
├─► 【ECFVGルート】(AVMA主催)
│ └─► 英語審査 + 学術試験(BCSE) + 実技試験(CPE:$12,804)
│ ※全50州で承認。ただしCPE費用高騰・高難易度が課題。
│
└─► 【PAVEルート】(AAVSB主催)
└─► 英語審査 + 予備試験(QSE) + 米国大学での1年間臨床実習(ECE)
※47州で承認。実技試験なしで確実な実務訓練が可能。
│
▼
【NAVLE(北米獣医師免許試験)を受験・合格】
▼
【就労ビザ(STEM OPT / H-1B等)を取得して全米で臨床開始】
- ECFVG(Educational Commission for Foreign Veterinary Graduates)AVMAが運営する最も歴史あるプログラムで、全50州で承認されています。書類審査、英語テスト、学科試験(BCSE)を経て、3日間の過酷なハンズオン実技試験(CPE)に合格する必要があります。※2026年よりCPEの受検料が$12,804(約190万円以上)へ改定されたため、費用負担が大きくなっています。
- PAVE(Program for the Assessment of Veterinary Education Equivalence)AAVSBが提供するプログラムで、全米47州で承認されています(アラバマ、カンザス、ミズーリ、ニューメキシコ、ネバダを除く)。一発勝負の実技試験(CPE)を受ける代わりに、アメリカの認可大学病院で1年間の評価対象臨床実習(ECE)をフルタイム受講・修了するルートです。
米国での臨床就労にあたっては、学生ビザ(F-1)のSTEM OPT(最長36ヶ月の就労許可)の活用や、大学病院(Cap-Exempt:抽選免除枠)でのH-1Bビザ取得など、戦略的なビザ計画を組み合わせることが成功のポイントとなります。
6. まとめ
アメリカで獣医師を目指すルートは、学部時代からの緻密な成績管理(GPA)、実務経験の積立、そしてベテリナリースクール(DVM)での過酷なトレーニングと国家試験(NAVLE)を突破する必要がある、非常に難易度の高い道のりです。
しかし、一度ライセンスを取得すれば、世界最高峰の専門性を正当に評価される大きなリターンと、グローバルな舞台で動物の命を預かる素晴らしいキャリアが待っています。将来アメリカで獣医師として活躍したい方は、早い段階から信頼できる一次情報を集め、戦略的な進学ロードマップを描いていきましょう。
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