小学生の「なりたい職業ランキング」で常に上位に挙がる職業、獣医師。
日本では獣医学課程のある大学で6年間の勉強、及び国家試験への合格が、獣医師として働くためには必要です。
それではアメリカで獣医師になるにはどのようなルートをたどる必要があるのでしょうか?
医師とは異なり、「動物」を対象とする獣医師は、留学生にも幅広くプログラムを提供してくれている資格の一つ。特にアメリカには自然が豊かでたくさんの種類の動物が生息していますので、獣医学を学ぶにはうってつけの環境です。
そこで今回はアメリカで獣医師になる方法について見ていきたいと思います。
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獣医師になるための一般的なルート
獣医師になるには、4年制大学を卒業後、「ベテリナリースクール」という日本で言う大学院過程に進まなければなりません。
その理由は、アメリカの教育課程の特徴にあります。アメリカの大学では、一般的に取得しなければならない単位数として120単位が平均とされており(大学により異なります)、単位の内訳としては、3分の1が一般教養科目(General Education)、3分の1が専門(Major)、残り3分の1が選択(Open Elective)という三部構成になっています。専門として何かしらの専攻を決めなくてはいけませんが、本格的な内容を勉強するわけではなく、あくまで基礎的な内容を学んでいくのです。
専門性を極めるには、学部課程だけでは足りず、大学院に進む必要があります。このような背景もあり、アメリカの教育の中心は大学院にある、と言われています。
少し脱線してアメリカの教育課程の特徴を説明してきましたが、このような背景もあり、専門性の高い「獣医」は必ず専門大学院に行かなければならない職業の1つとなっているのです。
大学院(ベテリナリースクール)では4年のプログラム構成とされており、大学から換算すると、高校卒業から獣医師になるための試験を受験するまでに、目安として8年は必要となります。動物の命を扱う仕事のため、大学院課程での成績評価もシビアです。
大学院を卒業後、NAVLE(North American Veterinary Licensing Examination)という北米獣医師免許試験に合格する必要があります。さらに、アメリカでは獣医師登録の基本ルールは、州ごとに決められているため、これらに加えて、州が設ける試験に合格しなければ、獣医師として働くことはできません。
こうして見てみると、アメリカで獣医師になるのはかなりハードルが高い道のりであることが分かります。
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獣医学部に進学するために必要な準備
ベテリナリースクールに進学するためには、どのような要件があるのでしょうか?獣医学で有名なUC DavisのRequirementを引用します。詳細な入学要件は、必ず各大学のHPを参照し、最新情報を確認するようにしましょう。
・2.5GPA以上獣医経験180時間
・獣医師1人以上を含む3人からの推薦
・必要単位の履修(グレード C 以上)
・地域認定大学の学士号
ちなみに、4年制大学在学中はどの分野を専攻(Major)にしておけば良いのでしょうか?
これに関しては、「この専攻でなければならない」という決まりはありません。ただ、ベテリナリースクールの入学条件として、決められた特定の単位を受講している必要がありますので(詳細は各大学院のRequirement参照)、アメリカの学生で将来獣医師になりたい場合、理系の科目、特に生物をMajorにする人が多い傾向にあります。例えば、UC Davisのベテリナリースクールでは、前提となっている単位として物理学、生物学、一般科学、有機化学、統計学、生化学、遺伝学、生理学が挙げられています。
また、大学院に進学をするためにはGPAは最低でも3.0は必要(条件ではもっと低く定められていても、実際には3.0以上はないと厳しいことが多い)ですので、成績の維持には注意しましょう。特にベテリナリースクールの中でも知名度の高いところになると、成績は満点に近い学生がほとんどです。例えばUC DavisのRequirementはGPA2.5以上と定められていますが、HPを見ると「Please note that these are the minimum requirements and competitive applications have substantially higher GPAs and experience.」とわざわざ記載されています。
専門性の高い授業が大学院から開始されるので、学部時代に何を学んでいたか、課外活動やアルバイトで何に取り組んでいたかなど、大学院の選考においてバックグラウンドは非常に大切です。特に学部課程で生物学をMajorにしておくと、バックグランドについて疑問を持たれることはあまりないでしょう。また、留学生の場合は英語能力も問われます(例えば、UC DavisのRequirementではTOEFL iBTテストで105点以上の取得が求められています)ので、英語試験の勉強もしておかなくてはなりません。
獣医学で有名な大学一覧
アメリカで獣医になるためには米国獣医協会(AVMA)に認可されている大学院(ベテリナリースクール)を卒業する必要がありますが、この認可大学(臨時認可含む)は2023年1月現在、全米で33校しかありません。
以下はU.S. Newsが発表している米国内の獣医学学校トップ10です。特に1位のUC Davisは大学病院をはじめ、国内トップの設備を有しています。獣医師になるためでなく、生物にまつわる研究分野や獣医学のプロフェッショナルを育成します。
ランク | 州 | 大学名 |
1 | カリフォルニア | カリフォルニア大学デイビス校 University of California, Davis |
2 | ニューヨーク | コーネル大学 Cornell University |
3 | コロラド | コロラド州立大学 Colorado State University |
4 | ノースカロライナ | ノースカロライナ州立大学 North Carolina State University |
5 | オハイオ | オハイオ州立大学 Ohio State University |
6 | テキサス | テキサス A&M大学 Texas A&M University–College Station |
7 | ペンシルベニア | ペンシルベニア大学 University of Pennsylvania |
8 | ウィスコンシン | ウィスコンシン大学マディソン校 University of Wisconsin–Madison |
9 | フロリダ | フロリダ大学 University of Florida |
10 | ジョージア | ジョージア大学 University of Georgia |
MBAやデータサイエンス等は、都会にある大学院の方が良いプログラムが提供されている事が多いですが、獣医学部に関しては、少し郊外の方がよい環境で学べるというのも珍しいことではありません。
また、実はAVMAに認可された大学は、カナダやオーストラリア、なんと韓国にもあります(残念ながら2023年1月現在、日本にはありません)。特にオーストラリアでは自然が豊かなこともあり「動物」の研究をするには非常に良い環境が整っています。
アメリカでの認可大学は33校しかないこともあり、人気の大学になると非常に倍率が高くなります。そのため、あえて他の国の大学を受験する学生もいるそう。興味のある方は、認可大学一覧をAVMA公式HPより確認してみてくださいね。
カリフォルニア大学についてはこちらで詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
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アメリカの獣医師についての豆知識
アメリカでは獣医師の約7割が女性であり、男女の給与格差が少ない分野であると言われています。また、平均年収は日本で535.5万円(男性獣医師の場合、2017年データ)ですが、アメリカでは倍以上の約1,370万円(138円換算、収入の中央値)です。州によって必要とされている獣医師の人数や年収に差があるため、アメリカで目指す場合には十分な調査をお勧めします。
獣医師はペットの診察・治療というイメージがありますが、家畜や海洋生物の健康管理も専門の一つです。また、鶏卵など家畜からくる食料品の安全性や、動物由来の伝染病の研究も分野に含まれており、多岐に渡る内容です。
アメリカ国内には専門性の高い獣医師資格も用意され、獣眼科医・獣病理学・動物実験に関わる専門医などは、大学院卒業後に更に2〜3年の追加期間を必要とします。非常に厳しい学びの過程ですが、獣眼科医の場合は年収が2,700万円以上とも言われています。それだけ専門性を評価してもらえる、やりがいのある分野であると言えるでしょう。
まとめ
今回はアメリカで獣医学へ進む方法、獣医学専門大学院のランキング、アメリカ獣医師についての豆知識などをご紹介しました。獣医師を目指す方はご自身が受ける授業や専攻を計画的に決めていき、高い成績を維持するようにしましょう。
また、記事でも見てきたとおり、現地の学生にとっても人気の学部であるため、難易度も高く、また学費のハードルも高いルートとなっています。アメリカで獣医師になりたい!という方は、このあたりを理解したうえで、しっかりと準備をして臨むようにしましょう。
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